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2010
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Wed

2010年05月12日(水曜日) 所得格差の帰結

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 (23:45)世界中の投資家が、「それはない」と思ったのではないでしょうか。米下院金融サービス委員会の資本市場小委員会は11日に、今月6日の米株価急落問題について公聴会を開いたが、そこで出来てきたのが米証券取引委員会(SEC)のシャピロ委員長による「現時点では(誤発注などが)唯一の原因だったとは特定できない」との証言。

 この問題は既にこのコーナーで何回も取り上げている。6日のニューヨーク株式市場がたった30分ほどの間で、往復1500ドル以上スイングした問題だ。ニューヨークのダウは一時前日引値比998ドル安になり、それが世界的な市場の混乱の原因となった。

 金融サービス委員会のフランク委員長(民主)は「過失がないのに損失を被った投資家がいる」と指摘。カンジョルスキー資本市場小委員長(同)も「公正とは言えない」とした。当然で、原因究明と再発防止策が焦点となっている。

 耳目を疑うような株価の急落に関しては諸説あった。誤発注説、高速取引に関わる問題など。しかし実に驚くことに、今になっても特定できていないというのだ。原因も分からずに急落する市場は、世界中の投資家の不信感を買った。これもあってかシャピロSEC委員長は再発防止に関して、取引を中断し値動きを制限する「サーキットブレーカー」を全米の取引所で銘柄ごとに適用する方針を明らかにした。

 来週にも暫定的に調査結果を発表するというので、とりあえずそれを待つしかないが、市場の急変に対応するサーキットブレーカー制度については、全米の6取引所で基準や対象が異なっている。このためシャピロ委員長は「市場横断的なサーキットブレーカー」が必要と強調して、「可能性としては(指数だけでなく)銘柄ごとに義務付ける」とした。

 ところで話は変わりますが、今私には中国関連で一つ非常に気になっている問題があります。都市の繁栄、高成長など中国の躍進の影で「多発している学校襲撃事件」です。もうこの問題は日本のメディアはあまり拾わないほど多くなっている。しかし、今日の日中にたまたま見ていたウォール・ストリート・ジャーナルに次のような記事を見付けた。

BEIJING―A Chinese news agency says seven children were hacked to death and at least 20 others injured in a violent rampage at a kindergarten in northwest Shaanxi province, in the lastest in a string of attacks on schools.

The official Xinhua News Agency didn't immediately give any other details on the Wednesday morning attack.

It comes after three attacks at schools and kindergartens late last month left dozens of children injured, and raised questions on security and issues of massive social inequalities believed to cause the violence.

 「またか」という印象で、そこで中国の問題に詳しく、ちょうど直前に別件でメールを交換した田代秀敏さん(ツイッターHP=http://twitter.com/chinaholicに「どうして中国では学校襲撃事件が多発するのか」と聞いたのです。ご覧になって頂ければ判りますが、彼のツイッターネームは「chinaholic」と言うほど中国に入れ込んでいる。また最近では文藝春秋に日本の国債市場の行方などに関して長い文章も書いている。以前からの友人です。

 彼から返ってきたのが以下に紹介するメールです。ご本人の承認を得て、以下に私のHPで公表します。深く考えさせられます。

 伊藤洋一様 お問い合わせ、ありがとうございます。

 中国で学校襲撃が多いのは巨大な所得格差の帰結です。

 中国では義務教育が有料です。貧しい家庭の子供は授業を受けることが出来ません。

 教師は基本給が無いか有っても極めて薄給なので、生徒から徴収した授業料で生計を立てます。ですから、「おしん」のように、授業料を払わずに教室の外から授業を覗いている子供がいると、石を投げつけたり、棒を振り回して、追い払います。そうしないと、全員が授業料を払わなくなり、生活が成り立たなくなるからです。

 しかし学校に行ける子供も大変です。教師が子供を使役して下請け生産を請け負って稼ぐことがあるからです。教師の給料を捻出するのと同時に学校の維持費を捻出するためです。小学校で花火を生産していたら爆発事故が起きて、多数の小学生が死傷した事件が大々的に報じられたことがあります。

 都市にいる農民工(出稼ぎ農民)の子供は農村籍なので都市の公立学校に通うことが出来ません。農民工出身の成功者達が運営する農民工の子供のための学校がありますが、教員も設備も環境も劣悪な上に、無料ではありませんから、そこにさえ通えない子供がいます。

 一方で、富裕層の子供達は、立派な私立学校に通います。教員も設備も環境も一流です。英語が母語の金髪碧眼の教員もいます。そうした学校の校門前には、毎朝、「公用車」が私物化されたベンツやBMWが並びます。豪華な自宅から子供達が乗せられて学校に送られてきているのです。子供達は一流ブランドの服を着て、日本製のランドセルを背負い、血色が良く、肌は艶艶しています。連れてきた父親や母親も一流ブランドの服を優雅に着こなし健康そのものです。

 そうした通学の光景を、遠くから、学校に行けない子供達が呆然と見つめます。その子供達の服は汚れ破れボロボロで、靴を履いていない子もいます。どの子も痩せて、土気色の顔をし、髪の毛はボサボサです。

 1998年にそうした光景をはじめて目撃して以来、遠からずして北京のあちらこちらで学校が襲撃されることを予感しました。予感は現実のものとなり、もはや隠しようがない事態になっています。

 都市でも農村でも学校に行くことができない子供達が沢山おり、そうした子供達は成長して、共産党が創った社会に対して憎悪しか抱いていない怒れる若者達になっていくのです。

 御参考に4月15日に、ある高齢の中国人が、1-3月期のGDPなどの経済統計が発表される日の早朝に配信した写真を添付します。中国に残る貧困を写したものです。後日、その中国人と電話で話したら、こう言っていました。

 「1949年、共和国が成立した時に中国人は、これで中国から貧困がなくなると思った。しかし、大躍進の失敗、文革という内乱を経て、改革開放が行われたが、中国から貧困がなくなるどころか、貧富の差は拡大するばかりだ。もはや共産党は何のために存在しているのだろうかが問われている」

 中国政治の泰斗である毛利和子・早稲田大学教授は教科書の中で中国の農村は太平天国の乱の直前のような緊張感が漂っていると述べていますが、私は同じ緊張感を北京の裏通りで感じました。

 以上、御参考になりましたら幸いです。

 実に壮絶なメールです。「生徒から徴収した授業料で生計を立てます」「教師が子供を使役して下請け生産を請け負って稼ぐ」と。発展にばかり気を取られてはいけない中国の実体です。

 彼が送ってくれた写真はあまりにも枚数が多く、紹介できませんが、それらを見ていると、「これは一体現代の中国か」と思います。目に見える中国ではない中国を紹介してくれた田代さんに感謝。彼はいろいろな会合も主催しており、ツイッターサイトに出ていますから、参加して頂ければ幸甚です。私も機会が会えば出る予定です。

23:45
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