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2011
09/11
Sun

2011年09月11日(日曜日) ロシアという国

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(08:24)ずっと窓から景色を見ていると、「でかいな」とか、「まだ人類は増えても収容する土地はあるじゃない」とか考えてしまう。来る前に読んだ本によれば、ロシアの面積は日本の45倍。永久凍土の場所があるにしても、でかい。車窓からそれが分かる。

ほんとうに時々街があり、車が走っているのに出くわす。しかし、それ以外は行けども行けども草原、その中で主に白樺林が続く。極東地方で樹木が多く、シベリアの深部に行くほど木は少なくなるという特徴はあるが、総じて緩やかな起伏だ。ちょっとした山はあっても、要するに人っ子一人いない草原と林の連続である。

こんだけでかいのに、人口は日本より2000万人ほど多いに過ぎない。しかも毎年70万人減っている、とフィナンシャル・タイムズに書いてあった。ということはそれほど遠くない将来に、日本の人口と等しくなる。日本も減っていますが、まだ数万のレベルだ。

FTには、「ロシアは将来、国境警備も出来なくなる」と書いてあった。本当にそうなるかどうかは知らない。しかし大変な過去と現在を抱えた国であることは確かだ。ロシアを構成する一番大きな民族はスラブだ。しかしこれは、英語で言う「スレーブ」(奴隷)につながるとも言われる。民族の過去として、なかなか厳しい。

ずっとヨーロッパの文化から遅れていた民族だった。その憂鬱と厳しい冬が音楽と素晴らしい文学を生んだのかもしれない。旅の終わりに行くサンクトペテルブルクは、エカテリーナ二世が「追いつきたい」という一心で作った帝政ロシアの都だと言われる。その位置も、モスクワよりヨーロッパに近い。

ロシアの大地に沈む夕陽。地平線に落ちる夕陽は、久しぶりでした ロシアはナポレオンもヒットラーも最後は寄せ付けなかった。そのあまりもの大きさと、その大きな国土を移動している間に敵軍に必ず襲ってくる冬将軍が大敵だった。それしても、ヨーロッパの列強はなぜその強さの絶頂でロシアを攻め、そして失敗して没落するのか?

冬将軍そのものは、ロシアの人々をも苦しめた。明後日到着するイルクーツクのバイカル湖では、赤軍の追跡を逃れて数千の元貴族などが僕(しもべ)や軍隊を連れ、総勢100万人以上で逃げたが、極寒のバイカル湖の上で、遮るものとてない強風(体温を奪う)と寒さで、25万人以上の人が湖上で死に、そのまま湖上で凍結し、そして春には解氷とともに湖底に沈んだと言われる。ロシア革命の時だ。その他の人も全滅だったと言われる。

そういう意味では、「冬のロシア、冬のシベリアに来たかった」という気がする。きっと寒いんだろうな。風もあって。私も零下15度くらいまでは知っているが、それ以上は想像の世界だ。昔西麻布にあり、今は銀在にあるアイス・バーなどちょろいものだ。どうせ短時間しかいないから。

ナポレオンもヒットラーも、正確にはどの辺まで侵攻したか知らない。どちらもロシアに大打撃を与えはしたものの、結局はこのでかい大地が持つ底知れぬ懐の深さと寒さに負けた。きっと南にいて想像するには、ロシアのでかさと寒さは限界を超えているのだと思う。机上の空論で作戦を立てても、そうはいかない。想定外の連続になる。なにせロシアはかなりの国土がまだ荒野なのだ。

これだけでかい国土。その下には一杯いろいろなものが埋まっているような気がする。プーチンがウラジオストックに来たのは、天然ガスのパイプラインが通じたからだそうだ。まだまだ何かありそうだ。アラスカをアメリカに売ってしまったにしても、まだロシアは天然資源では豊かな国だ。

しかしロシアを少し歩いただけだが、まだまだ貧しい国だと思う。何が足りないのかと考えたら、やはり工業だ。ロシアはいろいろ作れる。プーチンが日本からの輸入車に高い関税をかけたのも、自分が株を持っているかどうかに関係なく、ロシアにも乗用車メーカーはあるからだ。

しかし、ガイドのビダリさんが言う。「新車なのに、日本の中古車に劣る。スタイルも良くない」と。それではロシアの人も、他国の人も買わない。恐らく日本でロシア製の車に乗っているのは、いたとして大使館の人ぐらいだろう。ドイツ車は山ほど走っている。

なぜロシアでは工業が駄目なのか。超大国の一翼を担って核や宇宙では世界を席巻したのに。ここからは私の推論だ。多分、一つには極寒のロシアでは、スペックを他の国とは変えなければならないからではないか。よく落ちるボンバルについて言われるのは、「カナダという寒い土地で作られるこの航空会社の飛行機は、温かいところで使うとどこか狂う」ということだ。

今私が乗っているシベリア鉄道の車両にしても、「こんなにでかく重くしなくても」と思う。冬の雪を想定しているのかも知れないが、フロアが高いところにあるような気がする。極寒のロシアでは必要なのだろう。しかしこのスペックでは世界には売れない。そんな地理的理由によるスペックの違いが、一つ思い浮かぶ。

加えて寒さが人間の活動に与える影響だ。あまり寒いと人間は外に出なくなり、労働意欲は失われる。「酒でも飲んだ方が良い」となるのではないか。これは想像だが、寒い地方では家族が集まり、酒を飲んだり、お茶を飲む習慣がある。寒さ故の死と隣り合わせの世界では、ある意味刹那的になるのではないか。それにしても、「ロシア」から工業製品が想起されないのは、この国の先行きを懸念される。

ロシアには奇妙なところがある。時差が11もある。腕時計を合わせるのが大変だ。GPSケイタイはその点便利だ。中国があれだけでかいのに時差なしもおかしいが、11もあるのは凄い。

凄いはいいが、なんと東京とイルクーツクが同じ時差域に入るのだ。だからシベリア鉄道で移動していても、夜明けは凄く遅く、よって夕暮れも遅い。10日にロシアの大地に沈む太陽を撮影したのは午後7時49分だった。夜を短くしたかったのか。

もう一つ面白いのは、ロシアでは駅舎や鉄道の中の時計が、すべてモスクワ時間になっていることだ。だから10日の夕食は、列車の中の時計では午後1時ごろに摂った。凄い話だ。運転上そうした方が良いのだろうが、これも「おつりの計算が我々とは違う人たちの発想」なのかもしれない。

ま、これだけでかくて北にあれば、なかなか異なる常識を持っている人であることは分かる。前提が違うのだから、話をしなければ多分お互いに分からない。そういう気がする。

22:35
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