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2012
06/16
Sat

2012年06月16日(土曜日) ギリシャ問題の本質

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(23:20)いよいよ明日がギリシャの再総選挙ですか。どうなることやら。しかし根っこを見ると、どちらが勝っても「問題は残ったまま」と言える。

ギリシャが抱える最大の問題は、

「産業力の欠如」
「国民一人一人の生産性の低さ」

です。EUという域内での最適生産地を求めるシステムがそれを加速した事実も指摘できる。ギリシャの人達が言うので間違いない。「産業がみんな流出してしまった」と。

実際の所、ギリシャには観光以外に「これ」と言った産業が今はない。その観光は凄いですよ。タクシーの運転手さんが言うのです。「ギリシャというのは、ホテルや土産物屋などで職があって働いていさえすれば、ちゃんと家が持てる国なんだ」と。土地、家を含めてモノの値段が安いからです。

ところがその「職」に付いている人は、働ける国民10人の中で8人いない。若者は10人に5人が職に就けないでいる。今の危機の中でギリシャには観光客もかつてほど来なくなった。かつ、今は最大の輸出産業の一つになっているオリーブ油輸出が、特に南ヨーロッパの経済危機で不振だ。「南欧版オイル危機」と言う人も居る。

「ユーロ圏残留をかけて再選挙」とか言う見出しを日本の新聞で見かけるが、ちょっと違うんだよな。なぜなら、緊縮派も反緊縮派も「ユーロ残留」という一点では全く意見を異にしていない。

では問題は何か。反緊縮だと政治的に直ちにユーロ残留が難しくなる可能性が高い、ということだ。何せ左翼急進連合を率いるツィプラス氏(37才)は、「公務員を10万人増やす」「緊縮策以来減った年金や給与を元に戻す」と言っている。これはギリシャに約束の履行(全部でなくても大部分の)を迫る他の欧州諸国は絶対飲めない。

危機の始まる前に政権の座に付いていた緊縮派(NDとか全ギリシャ社会主義運動)も実は、「約束通り緊縮策を実施する」とは必ずしも言っていない。だって、今のギリシャで厳しい緊縮策を実施し続ければ経済がもっとシュリンクすることは明確だからだ。結局「緊縮策の中味を”成長”を加味してEUと再交渉」ということになる。恐らくEUもこれは飲まざるを得ないが、厳しい交渉になる。先例となるので。

しかし実はギリシャ危機の問題の本質、つまり「産業力の欠如」「国民一人一人の生産性の低さ」という問題は、政治的妥協とか合意の中では解決しない。かつ方向転換するには非常に時間がかかる。どちらが勝つか、という問題とは全く別である。

ギリシャでは当然だが税収が落ち込み続けている。行くと分かるが、「富」はある。多くの人が良いレストランで食事をしている。ギリシャの人々がだ。

しかし徴税システムが不備だし、国民に納税に関する義務意識が薄い。よって、既にギリシャの国庫はカラに近い状態だと言われる。カラになったら、ギリシャ政府が発行する債券がEUなどによって保証されない限り(そしたら売れる)、またEUなどから新たな資金借り入れをしない限り、ギリシャ政府は国家公務員の給与さえ払えなくなる。

もしそこまで考えるならば、17日の再総選挙で「どちらが勝つか」という問題は、実は「表面的なことである」「knee-jerk reactionとしては面白いが、長続きする相場を惹起するモノではない」と考えることができる。実は残るギリシャと残らないギリシャの両方を考えて、今の相場はななりの程度「ギリシャ問題」を織り込んでいる可能性が高い。

「knee-jerk reaction」とは脚気反応です。観察すると、ギリシャの人達は仕事をする気持ちがないわけではない。あるけれども、自分のペースで、会社に支配されずにやりたいだけだ。長い休暇もその中にあるが、ギリシャの暑さの中にいるとそれも「分かる」と思ってしまう。

結果判明は日本時間の18日の午前中ですか。脚気反応を見るのは当然だが、隠されている問題の本質を忘れないようにしないといけない。

23:16
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