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2013
04/13
Sat

2013年04月13日(土曜日) 多崎つくる

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(02:45)うーん、始めたら一気に読み終わってしまったんだから、「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」は、人を放さないストーリー性はあると思う。かつ3冊(so far)に及んだ「1Q84」に比べれば随分と読みやすい小説だ。370ページ。

でもぶっちゃけ、期待したような意外性のある話の展開ではなかった。高校時代の仲良し5人組と、そこから理由も告げられずにはじかれた多崎つくるの、時間を置いた理由を探す旅路。「1Q84」にあった話のスケールの大きさとか、巨大な不可解さとか、こみ入った展開はない。六本指(多指症)くらいかな。

前作と同じなのは、「ここで終わるのか....」「このあとは一体どうなるんだ...」という一種の消化不良感を読者(私)に残しながらの「了」。むろん村上春樹がハッピーエンド小説など書くとも思っていないが、「ここで止まってもらってもな」という印象もした。「勝手に想像せい..」ということでしょうか。

作品全体に音(音楽)が流れるイメージが漂うのが村上作品の一つの特徴だと思うのですが(前作ではのっけがヤナーチェックのシンフォニエッタ)、今回もそうです。静かーーに、今回の作品でも音が鳴り続ける。列車の音だったり、ピアノの音だったりする。そしてしばしばセクシャルな夢とそのものを指す単語が登場し、人が成長する過程で人間関係にやむなく生ずる行き違いのプロセスが明らかになる。ダブル・リアリティ感はお馴染みだ。

胸にストンと落ちる表現がいくつかあった。「人の心と人の心は調和だけで結びついているのではない。それはむしろ傷と傷よって深く結びついているのだ。痛みと痛みによって、脆うさと脆うさとによって繋がっている」(307ページ)とか「人生は複雑な音符のようだ......たくさんの奇妙な記号と、意味不明な書き込みとで満ちている」(343ページ)など。相変わらず文章はうまい。

どこか懐かしさを感じる作品です。村上作品を全部読んでいるわけではないが、その「懐かしさ」は、少し以前の彼の作品のモチーフに戻ったような気がするせいかも、また自分にとってかなり昔の高校生の時代に話のスタートがあるからなのかも知れない。

私として「こういう展開かも...」と思いながら読んでいると、そう展開することもある村上作品です。誰も過ぎ去った若者の世界にありそうな。そういう意味では身近な印象もある。

そう言えば「伊藤」という名字には色彩がないな。アオ、アカ、シロ、クロには笑いました。ははは「洋一」にも色彩なし。だからカラーレス? てっちゃんでもあるつくる君と悩みを共有している? ま誰かが慰めてくれているとおり「器」ではありますが。

でもどうなんでしょうか。この作品が彼のノーベル文学賞受賞に後押しとなるのかどうか.....?

04:19
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