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2014
12/17
Wed

深まるロシアの危機

day by day
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(15:45)海外の新聞を読んでいたら、「プーチンが木曜日に年次記者会見(annual news conference )をする」と書いてあった。「年次」(annual)というのが面白かったのですが、当然「経済危機」に関して何かしら喋らざるを得ないでしょう。

 プーチンへの支持は依然としてロシアでは高いと聞く。それはクリミア問題にしろ「欧米と対等に渡り合い、渡り合っただけでなく長らくロシアの領土だったクリミアを取り戻した」というロシア人のプライドにかかわる部分があるからだ、と言われる。確かに今のロシアはソ連崩壊後の惨めなロシアではない。

 ロシアにはシベリア鉄道に乗りに2011年に行きました。リンク先がその時の私のロシアに対する印象ですが、小売店にはモノが溢れ、サンクトペテルブルクにはカイエンが溢れていた。まだまだ途上国の面影はあったが、豊かさも目に付いた。

 しかし今それがピンチな状態になっている。ロシアの中央銀行は今の世界的な低金利の世界において驚異的な17%という政策金利を発表した。その金利では、お金を借りて営業しているところは借り換えでは借りられなくなるでしょうし、経済が「マイナス成長」になることは明らか。

 なのになぜそんな法外な高金利を設定したかというと、ルーブルが急落している為。「At one point Tuesday, a dollar could buy 79 rubles, an extraordinary development for a currency that stood at 33 rubles to the dollar in January and held mostly steady for much of the year. Later Tuesday, the currency stabilized closer to 68 rubles to the dollar.」とワシントン・ポスト。そりゃ輸入物価は上がる。

 私がロシアで一番感じたのは、「ロシアはエネルギーの他はすべて輸入に頼っているような国だ」ということです。ロシア製の車はあるが、誰も買わない。北の国なので、果物などは全て輸入。しかしヨーロッパがそれを輸出規制した。制裁です。

 インフレと生活苦が直ぐにロシアの民を襲うことになる。何が起きるのか。一つは「生活水準の引き下げ」です。南欧の人々を襲った苦境が時間の経過の中でロシアの人達を襲うことになる。同国の国家予算の45%を占める石油の価格急落ということは、それが不可避である事を意味している。

 人気の高いプーチンは無傷か。ワシントン・ポストは「Putin remains tremendously popular in Russia, but his rule has long been predicated on a basic bargain with voters: They gain economic prosperity and stability in exchange for acquiescence to a political life devoid of real opposition. His half of the deal now appears in question.」と書いている。

 大統領と国民の間の「暗黙の了解」はむろんまだ完全には崩れていない。それは最近の歴代大統領の中では唯一プーチンがロシアの人々にプライドを感じさせてくれたこともあるからだと思う。ちょっと経済危機になったからといってロシアの世論が「クリミアはウクライナに返そう」なんて意見は出てこないだろう。

 プーチンも何とかこの難局を打開しようと考えるだろう。しかし今の原油市場を取り巻く環境は、ロシアの思惑だけで動くような代物ではない。一方で、「石油価格下落の準備はある程度出来ている」という側面もある。

 具体的には潤沢な、1998年の危機の時にはなかった外貨準備だ。それは今現在4160億ドルと言われる。確かに大きい。しかしこの外貨準備は既に今年の初めに比べると800億ドルも減っている。安閑と出来る数字でもない。

 不安定な動きだが、筆者は「原油市場の先行き」には懸念を抱いていない。そこには絶対的な需要がある。かつ世界のエネルギーの大宗が石油とその関連であることは当面変わらない。だから、価格はいつか底を打つ。もう打っている可能性もある。

 しかし、ロシアの今のシステム(経済、政治の)の脆弱性は気になる。今の危機はまずなによりも「ロシアの危機」と定義することが出来ると思う。

15:20
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