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2008
11/05
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2008年11月05日(水曜日) 同時に実利的

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 (13:00)日本時間の午後2時くらいからのオバマ次期大統領の「勝利宣言」をCNNで見ていましたが、それはそれ自体が一つの「革命」の瞬間と言っても良い事のように思えました。

 なぜそう思うかというと、アメリカに4年間住んだ人間として、オバマが大統領に当選した現在でも人種間の複雑な感情が残っていることを知っているだけに、「それでもアメリカがそれを乗り越える努力をした」ということが、理由の第一。多分20年前のアメリカでは決して起こらなかった事です。それが起こった。それはアメリカのマスコミ風に言えば「sea change」です。

 その結果、つまりオバマが大統領になったことで最終的に人種間の融和が進むのか、逆に人種間の対立が深まるのかは、何年も先にしか分からない。しかしアメリカは試すことに決めた。そこに活力を感じるし、アメリカ政治のダイナミズムの典型だと思うわけです。多くの国民が「試すことを決めた」ということ自体が意味あるトライだと思う。

 「黒人を自分の大統領候補に選ぶ」ことに、どのくらい多くのアメリカの白人が抵抗を感じたのかは知らない。想像するしかない。多分年寄りの方が抵抗感が強かったのでしょう。 CNNが今流している面白い分析では、若い人ほど「人種の壁」を意識せずにオバマに票を入れたとしている。年齢別に統計を取るとマケインが勝っているのは、相当上の世代だけらしい。

 だとしたら、「ブラッドリー効果」など20年も前の現象を主に取り出して、「微妙な人種間の壁」の可能性を語っていた我々の方が、アメリカの政治の大きな変化から取り残されていた可能性がある。さもなくば、今は少なくともそういう感情が一時的に低下するインターバルなのかもしれず、私などもそれを読めなかったとも言える。

 アメリカは依然として人口の75%を白人が占める国だ。黒人(Afro-American)と呼ばれる人は13%くらいしかいない。古いかも知れないが人種中心に物事を考えるなら、一般的に「黒人」と呼ばれるバラク・オバマが圧倒的選挙人の差で大統領に選ばれたのは、そこ事自体が非常に画期的なことだと思う。オバマも勝利宣言で、「Change has come to America」と表現していた。日本の、そして世界のマスコミが「初の黒人大統領」と見出しを打つのは分かる気もする。

 その一方で、大統領選挙をずっと見続けたし、10月には9日ほどアメリカに行っていた人間とすると、「でもアメリカ人がどちらの大統領が良いのか」を決めたのは、やはり政策、特に経済政策と、それを遂行する能力(年齢も含めて)だったのではないか、という気がする。それほどまでに今のアメリカの病根は深い。ではその深い憂鬱を振り払えるのはオバマか、マケインか。その選択だった。

 これは日テレの特番でも言ったのですが、筆者は選挙運動を通じて見ていてマケインについて、「この人は成長した」とは一回も思わなかった。どの選挙演説会場でもオウムのように同じ事を繰り返していた。これに対してオバマは明らかに成長し、柔軟性を増した。アメリカ国民もそこは見ていたと思う。ロングアイランドで行われた第三回の候補者討論会を聞き終えたとき、私は「オバマは成長した」と思った。

 だから私は、確かにアメリカ国民のオバマ選出は、多くのマスコミが言うように「historic」(歴史的)であると同時に、非常に大事なことに「pragmatic」(実利的)な選択だと思う。金融危機が既に始まろうとしているときに、「アメリカ経済のファンダメンタルズは依然として強い」(マケイン)は、彼の「経済音痴」ぶりを際立たせた。

 長くなるのでまた書きますが、ということは「実利」に叶わない、「期待」にそえないことが分かったら、「歴史的な決断」の後でも、アメリカ国民は非常にオバマを突き放した目で見る可能性がある、ということです。少し先の話ですが。

 最近の世界各国の新政権は、発足時にこそ高い支持率を誇るが、直ぐに「失望」に変わる。オバマはその前に、いくつかの「変化」を国民にもたらさねばならない。それは経済の回復かも知れないし、イラクからの撤退かも知れない。

 しかしそれはなかなか難しい。

15:44
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