日々のライブな情報ページ

2008
11/19
Wed

2008年11月19日(水曜日) インタビュー

day by day
EOF; } ?>

 (00:45)別に何かあったわけではないが、改めてインタビューは難しいな、と思いました。

オバマが若き頃活躍したオールトゲルド・ガーデン地区の入り口にある表示板  いろいろな番組で、インタビューは何回となくしています。政治家だったり、エコノミストだったり、科学者だったり、研究者だったりする。言ってみれば彼等は一般的には私よりその問題については知識が上だったり、当該の世界に詳しい人だと言える。

 実はそういう人達へのインタビューは結構楽なのです。なぜなら、ある意味でこっちから「本音を聞き、本質を聞き、そして知識を引き出す」ことをすれば良い。まあ言ってみれば「チャレンジし突っかかっていけば良い」のです。なぜならそういう人達は私より必ず強いモノ、強い知識を持っている。時に優しくなることは必要だが、強者には正直強く聞ける。

 それはノーベル経済学賞を取ったばかりのポール・クルーグマンでも同じ事です。偉業を達成した、それが評価されたと言うことではアウトスタンディングな人ですが、私としては非常に聞きやすかった。周りの人の方が緊張していた。彼のこれまでの主張も知っているし、彼の人柄も文章を何度も読んでいるので知っている。まあ言ってみれば、「知人への、知り合いへのインタビュー」なのです。

 しかし難しいのは今まで会ったこともない種類の人達、社会的には弱いと考えられる人達へのインタビューです。これは難しい。なぜなら、これはあまり私自身があまり経験したことのないことを想像しながら聞かねばならない。

 具体的にはレイオフされたり、自分が買った家が人手に渡ってしまったり、今家族が困っている人達へのインタビューです。私はレイオフされたこともないし、家を失ったこともない。「レイオフされたけど、どうですか」では、「悲しいに決まっているだろう....」となってしまう。入り口が実に難しいのです。

 まあそれは別に今回に限ったことではない。それは以前からなのですが、今回はそういうアメリカ経済の苦境に喘ぐ人達と数多く会っているので、余計そう思うわけです。今の状況に立ち至ったことについては、皆それぞれ思いがある。反省もしているのでしょう。

 しかしだからこそ、他人に触られたくないことも一杯あるはずです。それでもインタビューに応じている。「俺に言わせろ」という人もたまに現れるが、必ずしもそうではない人もいる。しかし、こちらも「聞いて良かった」というところまでインタビューを深めるためには、それを意図的に避けていてもいけない。最後には触らなければならない問題もある。

オールトゲルド・ガーデン地区にあったスーパーマーケットの残骸。いかにも廃れた感じがする。オバマ氏が活躍していた頃はどうだったのか  最初は何と言っても「心を開いてもらうこと」でしょうか。このことについては、失敗も成功も今回はある。相手の目をしっかり見て、「あなたの言うことを真剣に聞いていますよ」という姿勢をはっきり示すことは当然必要だが、あるときには聞きたいことに到達するのにちょっと時間をかけていろいろな「感情を共有しながら」進む必要があるし、それが礼儀というものでしょう。

 今回思ったのは、決して急いではダメということです。あまり長くてもいけないが、「この点だけ聞けばよい」という態度は相手にも伝わってしまう。また重要なのは、せっかく良いインタビューだったとしても、出来上がった番組の中では使われない部分も多いし、全く登場させしないケースもある。インタビューに出た人はある意味で、「(番組のVTRに)出る事を覚悟し、一方でそれを楽しみにしながら」応じる。だから例えば今は私はアメリカにいますが、「これはいつの番組だ」「こちらでは見れないのか」とインタビューした相手によく聞かれる。

 「DVDは送るから」と言っても、わずか出来上がりの番組は1時間程度、長くて2時間の番組。それに入りきらないで全く出てこないインタビューや取材はいっぱいある。だって、長い場合は一本のインタビューが1時間以上かかりますから、切らざるを得ない。番組の中では重要な要素が入っているところを取り出さざるを得ないのです。

 私のような人間は、例えば雑誌のインタビューを1時間近く受けても、使われるのはたったワンだったりツー・センテンスなんてことはしょっちゅうなので慣れている。しかしそうじゃない人達もいる。だからインタビューが入っている日には、「何から聞こう」「きっかけが出来たらこう展開しよう」と一生懸命考えるのです。

大部分の棟が老朽化し、既に出入り口、窓などすべて目張りされていて使われいない。ところでころにまだ生活の臭いがあるが、住んでいる人はごく少ない。ゴーストタウンのように薄気味が悪い  インタビューが難しいのは、相手が言っていることを聞きながら、その流れの中で次に何を質問したらよいのかを考えなければならない点です。これは日本語の時は結構楽です。しかし英語で質問し、その答えを英語で聞きながら、その最中に次の質問を英語で考えるというのは結構難しい。私の場合は相手が英語を喋れば通訳を入れずにやりますから、ずっとそれを続けるわけです。そして最後に聞き残したことはないかともう一度考えるわけです。

 一回死にそうになったことがある。ナマでの話です。インド人が電話の先にいてまず英語で質問し、聴取者に「こう聞きました」と説明し、相手の喋りを聞いた後でまたそれを聴取者に「彼はこう言ってました」と説明し、その過程で次の質問を英語で考える......というやつです。はっきり聞き取れれば良い。しかし相手はインド人。その英語が実にインド訛りであまり良くわからない。パニくりましたよ。この時は本当に逃げ出したくなった。ナマですからね。しかも事前の打ち合わせもする時間がなかった。

 まあでも通訳を入れたらインタビュー時間が二倍になってしまう。取材効率が悪いわけです。少なくとも経済については、通訳さんより中味は私の方が知っているし、ニュースも追っている。まあ時々次の質問を考えているときにふっと「あれ今彼は何を言ったんだ」とアットアロスすることもある。聖徳太子にならないといけない。

 ところで、昨日話題にした若きオバマが1985年6月から1988年5月まで3年弱社会活動家として働いたオールトゲルド・ガーデンズに再び行ってみました。どうしても気になったからです。もう一度見たいし、写真も撮りたいと。上の三枚がそれです。いつもの通り写真の上にカーソルを乗せて頂けると説明が出てきますが、改めて上からを順番に説明すると

 「オバマが若き頃活躍したオールトゲルド・ガーデン地区の入り口にある表示板」
 「オールトゲルド・ガーデン地区にあったスーパーマーケットの残骸。いかにも廃れた感じがする。オバマ氏が活躍していた頃はどうだったのか」
 「大部分の棟が老朽化し、既に出入り口、窓などすべて目張りされていて使われいない。ところでころにまだ生活の臭いがあるが、住んでいる人はごく少ない。ゴーストタウンのように薄気味が悪い」

 当のオバマ氏のその後は、シカゴで自宅と連邦ビルの事務所を往復しながら、次期政権の骨格を作っているらしい。連邦ビルはシカゴ商品取引所(CBOT)の直ぐ近くにあって、凄まじい数の警官がいる。国務長官にヒラリー・クリントンを検討しているだとかいろいろ言われているが、まだ大きなところは決まっていない。司法長官が決まったのかな。

 今回の一連の取材ではいろいろなオバマへの期待が見えてきて、それは番組(来年の1月1日)に紹介できると思うのですが、だからといってまだ上院議員になったばかりの若き次期大統領がどういう人か分かったわけではない。ブッシュの場合は非常に分かりやすかったのですが、オバマは違う。

 今回の取材で彼の活動の原点をしっかり見れたことは良かったと思う。明日、いや今日19日にはニューヨークに移動します。

15:59
EOF; } ?>
ページの先頭へ
twitter
伊藤洋一公式Twitterアカウント

サーチ


カテゴリー


最新の記事

カレンダー

キーワード