ポルトガルでとっても印象的なのは「音」です。車が街中を走ることで出る音には、顕著な特徴があり、そして人々の話す時の音量にも他の都市とは目立った違いがある。それぞれの国、それぞれの都市には顕著な音の特徴があるのですが、ポルトガル、その諸都市の音はとっても気になった。心地よい、という意味で。
例えば、車が走行中に出す音。特に街中はリスボンでもポルトでもそうですが、狭いタイル張りや石を敷き詰めた道が多い。その上を車が走ると、一つ一つのタイルや石をタイヤが叩く音が出で、それが連続的に聞こえる。特に街が寝静まった夜中に車が石やタイル張りの道を通るときの音が遠方から聞こえてくるのは、「この国、ここの都市の特徴だな」と思う。とっても異国情緒豊かです。
次に人々が話をするときの音量。はっきり言って世界の主要都市の中でもっとも低いと思う。というか静か。ここでは中国人観光客も静かに喋っているように見える。銀座の中国人観光客の喧騒を知っている身からすると、「こうも違うか」と思う。来る人の種類が違うと言うこともあるかも知れない。
何度も3人でレストランで食事をしましたが、室内のどこかから大きな声が聞こえると言うことはない。皆隣のテービルにいてやっと聞き取れるくらいの小さな声で喋る。アメリカ人もそうです。
言ってみればそれは「都会的喧騒の欠如」とも言え、それは一番大きな都市としてのリスボンも50万人しかいない国の特徴かも知れないし、若い人がそれほど比率として多くないと言うこともあるだろう。
かなり以前ですが、ウッディ・アレンが映画の中で喋り続けるのを見て、「これがアメリカか」と思ったが、アメリカのニューヨーク(喧騒の極みです)でもロングアイランドの突先の小さなレストランに入って隣の老人夫婦を見ていたら、日本と同じようにほんの数言葉を確認するように喋るだけ。「keep noisy」なのは都会的現象とその時悟ったが、リスボンは一応の都会でも、気持ち良く静かです。
車も静かに走ります。歩行者が横断歩道に差し掛かると必ず静かに車が止まる。日本も法令上はそうなっていますが、8割方の車(特にタクシーがそう)はタイヤが道路を叩く音を強く出しながら、走り去る。
ポルトガルではそういうことはない。ここに慣れると、東京や北京・上海では危ない。とにかく高速道路でも、ポルトガルの車は静かです。異常行動はまずしない。リスボンからポルトに向かう列車の中も、平日の新幹線並みに静かでした。
そして人々は、静かに、そしてゆっくり歩く。10人に一人は凄く早足で歩くようなニューヨークや東京のようなことはない。だから街も静かです。そうポルトガルは、「静かの国」です。とっても居心地が良い。(続)