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2019
08/01
Thu

利下げ、失望、しかし........

day by day
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 就任以来初めて"2人"の反対を押し切って0.25%の利下げをしたのに、マーケットがパウエル議長に送り返してきたメッセージは「君には失望した」だった、という顛末でしょうか。利下げ初日の反応としては。

 今この文章を書いている午前5時直後のニューヨークのマーケットの引け(iPhoneの株価参照)は、ダウが333.75ドル安の26864.27、S&P500が32.80安の2980.38、Nasdaqが98.19安の8175.42。分母が大きくなっているので、大きな下げ幅に見えるが、パーセントにするとダウが1.23%、S&P500が1.09%、Nasdaqが1.19%の各下落。目に付くのはS&P500の引けが8000の大台を割ったことかな。

 0.25%の利下げも、それに対する二人の委員(Esther L. George and Eric S. Rosengren)の反対(据え置きを主張)も予想通りだった。なので、声明(https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20190731a.htm)が出た直後のマーケットは前日引値前後を当初うろうろしていた、と筆者は理解している。それがなぜ引けでは1%を超える下げになったのか。それはFOMC終了後のパウエル議長の記者会見にある。CNBCによれば、彼はこう述べた。

 

 「"That refers back to other times when the FOMC has cut rates in the middle of a cycle and I'm contrasting it there with the beginning of a lengthy cutting cycle. That is not what we're seeing now, that's not our perspective now. You have to look at not just the 25 basis-point cut, but look at the committee's actions over the year."

 

"We started off [the year] expecting some rate increases. We then moved to a patient setting for a few months and now we've moved here.As we've moved to more accommodative policy, the economy has actually performed as expected with that gradual increase in support."」

 

 「過去にもFRBはサイクル(利上げ)の途中で利下げをしたことがある。それは長い利下げサイクルとは異なることを強調したい。我々が決断した0.25%の利下げは長い利下げサイクルの始まりではないし、長期利下げは我々が描いている展望でもない........」という部分だ。最初の文章。

 最初だけではなくこの文章全体を読むと、パウエル議長は「私たちがやってきたことは正しいですよね」と成果を主張しているように見える。「the economy has actually performed as expected」と彼は言う。実際その通りだ。「今回の0.25%の利下げばかりでなく、この一年のFRBの行動を見て下さい」と彼。「数回の利上げを予想して2019年を始めたが、その後忍耐モード(a patient setting for a few months)」を取り、今回利下げした。今までより緩和的姿勢で金融政策を運営する。何回か徐々に利上げしても経済は予想通りうまく回ってきた......と続く。

 では問題は、なぜ二人もの反対を押し切って利下げをしたのか。その答えは声明に記されている。「In light of the implications of global developments for the economic outlook as well as muted inflation pressures, the Committee decided to lower the target range for the federal funds rate to 2 to 2-1/4 percent.」。理由は二つだと言うことだ。「経済見通しに対するグローバルな様々な出来事が持つ意味合い」「沈黙するインフレ圧力」。

 前者はややこしい言い方をしているが、要するに米中貿易摩擦などなどを指す。「中国経済もそうだが、アメリカ経済も先行き不透明。個人消費は堅調だが、設備投資は良くない」「だから予防的にmid-cycleだが利下げ調整した」と言っている。今後については「As the Committee contemplates the future path of the target range for the federal funds rate, it will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook and will act as appropriate to sustain the expansion, with a strong labor market and inflation near its symmetric 2 percent objective」として、相変わらず「will act as appropriate to sustain the expansion」を入れた。

 マーケットは「一回の利下げだけで、二回目はないかも知れない。またその後は利上げの戻るのでは」と理解して株価を下げた。しかし声明ではちゃんと「年内もう一度の利下げ」をし、その後も「かもしれない」と述べていることになる。マーケットは脚気反応が常だから、「期待に反して..」という部分で、ちょっと引けに掛けて過剰反応した可能性が高い。

 FRBの緩和姿勢は、「The Committee will conclude the reduction of its aggregate securities holdings in the System Open Market Account in August, two months earlier than previously indicated.」(声明)にも表れている。つまりFRB手持ち証券の削減(マーケットから資金を吸収)の2ヶ月前倒し停止。もともとの停止予定の2ヶ月前倒し実施だが、「FRBの気持ち」は受け取れる。マーケットは無視したが。

 

 あと一人過剰反応するとしたら、それはトランプ大統領かな。「俺が大幅利下げを主張したのに0.25%だけ。株価は大幅下げた。そらみたことか」と必ずツイートするだろう。パウエル議長は「イエレンさんと同じく一期限りかな」と覚悟しながらも、今回の利下げ幅を0.25%に抑えた。だって0.5%の利下げの選択肢は、今のFOMCの構成では多分ない。賛成多数にならない。パウエル議長本人も声明の第1パラが指摘するように「アメリカ経済の現状を全体で見れば好調」なわけだから、0.5利下げの選択肢は最初からなかったと言える。マーケットが過剰に期待した、というのが実情だろう。

 しかし「mid-cycle adjustment」という認識はマーケットには目新しかった。当然持つべきだったが。「予想していた9月の年内二回目の利下げは必ずしも保証されていない」というマーケットの当初判断。多分早とちりだ。その分でダウは333ドルの大当たりの下げとなった。筆者は「mid-cycle adjustment」が一回ということはまずない、と考える。それだったらやらない方が良い。多分もう一度やる。ニューヨークの株価も明日は(今日は)、反省の買い戻しが入るかも知れない。

06:32
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