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2019
10/31
Thu

当面、打ち止めやな

day by day

 「FRBとマーケットの政策金利観が一致した」という意味では、比較的レアな事が起きたと考えても良いかも知れない。過去数回のFOMC決定時には、ニューヨークの株価はまずは「下げ」で声明とパウエル議長記者会見に反応した。しかし今回は、「もう適切に行動」する時期は過ぎましたよと「次回も利下げ」のイメージを打ち消したにもかかわらず、ニューヨークの株価はSPを中心に過去最高値を更新した。

 その理由が面白い。マーケットが反応したのは、「今後利上げを考える場合は、インフレ率が実際的に大幅に上昇する必要がある」(the central bank would need to see a "really significant" rise in inflation before the Fed thought about hiking.)とした議長の記者会見部分だ。さらに重要なのは今年7月から前回の声明(https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20190918a.htm)までに来り返し使われてきた第二パラの最後の文章「As the Committee contemplates the future path of the target range for the federal funds rate, it will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook and will act as appropriate to sustain the expansion, with a strong labor market and inflation near its symmetric 2 percent objective.」から、今回は「will act as appropriate to sustain the expansion」の部分を落とした。それは「今後は行動しない。インフレ率が大きく上がるまでは」ということを意味する。つまり「当面はアメリカの政策金利は据え置き」と言っている。

 そのFRBとパウエル議長のスタンスに、株価はポジティブに反応した。これが「当局とマーケットの政策金利観が一致した」と私が判断する理由だ。レアな事。マーケットは普通「もっと下がるだろう」という期待で、その動きを先取りし、そしてそれを修正する。しかし今回はそれがなかった。

 声明を読む時に最初に私の目が行くのは、「今回は何人が異を唱えたか」です。声明の最後の文章。今回は「Voting against this action were: Esther L. George and Eric S. Rosengren, who preferred at this meeting to maintain the target range at 1-3/4 percent to 2 percent.」となっていた。つまり前回の異論3人から、今回は2人に減った。かつ重要なのは、「据え置き派の2人」は、前回9月時点の主張「who preferred to maintain the target range at 2 percent to 2-1/4 percent.」から、レベル感を0.25%ポイント下げている。つまり「据え置き派」の2人も、ディレイしているだけでFRBのこれまで2回の利下げを形として追認している、と読める。

 今回の声明(https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20191030a.htm)でFOMCが選択した新しい政策金利のレベル(3回連続の利下げの結果)は「the Committee decided to lower the target range for the federal funds rate to 1-1/2 to 1-3/4 percent.」だ。今年7月FOMCからの「In light of the implications of global developments for the economic outlook as well as muted inflation pressures」を理由とする利下げが始まる前の政策金利のレベルは「2-1/4 to 2-1/2 percent.」だった。それから見ると0.75%の利下げ。分母からすると0.75%ポイントの下げは、パーセンテージとしては相当大きい。そこでFRBとマーケットの金利観が一致した。

 最近のツイートでトランプ大統領はFRBに「マイナス金利」を要求している。その意味をどのくら理解しているかは別にして、この声明を読む限りパウエルFRBはそれを明確に拒否した。トランプ大統領が自分でパウエル議長を選任したわけだから、大統領が彼の首をすげ替えるにしても、それは自分が再選された後だ。今の勢いだと、トランプ大統領は「より自分の言うことを聞く議長」を再選後に選ぶ。しかし問題はそもそも彼が再選されるかどうか。

 それにしても今回一番面白かったのは、最初にも書いたが「次の利下げは当面ありませよ」「これで当面は打ち止め」とFOMC声明と議長記者会見で明らかになったにもかかわらず、ニューヨークのSP500で示されたように株価が上昇し、史上最高値を付けた(https://www.wsj.com/articles/global-stocks-drift-lower-ahead-of-fed-decision-11572427384?mod=article_inline)ことだ。そういう意味では、マーケットは比較的トランプ大統領に追い風になっているとも言える。特にこれという業績がないなかで、経済は株価の好調は最大のウリだ。

07:31
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